「eえほん賞」とは
「eえほんプロジェクト」では、デジタル絵本のコンペティション「eえほん賞」を開催しています。
「eえほん賞」では小学生を対象にiPad向けの絵本を描きます。
設定されたテーマに沿い5枚以上のイラストとストーリーの絵本を制作し、できた絵本は読み聞かせ会などに使用されます。
2023年度「eえほん賞」受賞作品
2023年度のテーマは「センス・オブ・ワンダー」で4作品が入賞しました。授業「ビジュアル表現基礎」のイラスト課題から生まれた絵本もランクインしています。
最優秀賞『ペンギンさんのお仕事』作:おだ ひめか
動物園に向かうペンギンさん。なんとペンギンさんのお仕事は、その動物園で違う動物になって働くことで…。
水彩タッチで描かれており、温もりのある生き生きとしたキャラクターになっています。動物がほかの動物に化けるというアイデアには驚きとおかしみがあります。この絵本の長編やほかのメディア展開も見てみたいですね。
優秀賞『ぼくのおと』作:丸谷 素良
「ぼくには、みつけなきゃいけない音がある気がするんだ それはどんな音だろう?」聞こえてくる音に耳を傾けて旅に出る…。
聴覚による観察がテーマをよく体現しています。謎が心を打つ結末につながっているため読者を引き込ませます。ダイナミックな構図、色彩の調和したイラストと手書き文字がマッチしていてオシャレ。
奨励賞『自分でやるのって難しい』作:名和 開司
パンツをくわえた犬を追いかけて、初めて外出した少年が繰り広げるはじめての体験の連続…。
見やすくユーモアのある魅力的なイラストと軽やかなストーリー展開で、子ども達への読み聞かせに最適な作品です。イラストの描き込みぐあいもちょうどよく心地がいい。
佳作『ふしぎなたね』作:廣中茉優花
ふしぎなたね屋さんの少年が、それぞれの困りごとに合わせた種を売りますが、貧しいお客さんばかり…。
たね屋さんが繰り広げる奇想天外な展開が面白いですね。カラフルなたねとそれを取り巻く登場人物たちがキュート。
参考出展
また、かわ研究室のプロジェクトとして、潜在拡散モデルを活用した参考作品が出展されました。新しいテクノロジーと感性との融合を見てとれる作品たちですが、審査対象外です。
出展作品:『花びん…』『ティータイム』『LIFEへんてこな』『Jemini』『バベル』『動物たちのくらし』『こころよみ』『黄金の泉』など
2022年度「eえほん賞」受賞作品
2022年度のテーマは「おとぎ話と魔法」で4作品が入賞しました。授業「ビジュアル表現基礎」のイラスト課題から生まれた絵本がいくつかランクインしています。
最優秀賞『あたま島の物語』作:はまなみ ゆうな
孤独な「あたま島」が流すカラフルな涙に魚があつまり、漁師があつまり、やがて街が…。
秀逸なイラストによる短い物語に光る発想と起承転結が見事に織り込まれています。ぜひ長編で読んでみたい楽しいお話です。
優秀賞『夜を泳ぐ深海魚』作:なかい あや
ビル街の夜空に深海魚が泳いでいる。光を求めてチョウチンアンコウに出会い、シーラカンスに歴史をみて…。
面と線の織りなす創造性あふれるイラストが現代的で新しく暗闇に光る輝きの表現が美しくテーマと合っています。
奨励賞『ピケと星のまほう』作:ひがし ふうな
空からひかる石と小人たちが降ってきた。小人たちを空へ返すために、魔法使いのおばあさんと星のスープをこしらえて…。
親しみやすい人物と不思議な構図と自然なストーリーが魔法世界へと読者を誘います。
佳作『モニ』作:わた あめ
朝がこない町でひとりだけキレイな花を咲かせられないモニは、うさぎの先生にもらった魔法のたねを持って、朝を探す旅に出る…。
風景描写が独特で魅力を放っています。とくに暗から明への転換が劇的で印象に残るシーン展開です。
参考出展
また、かわ研究室のプロジェクトとして、潜在拡散モデルを活用した参考作品が出展されました。新しいテクノロジーを駆使した見ごたえのある作品たちですが、審査対象外です。
出展作品:『真夏の夜の歌』『妖精カメラ』『赤いぼうし』『Books』『たまご』 『失われた王国』 『魔法遺産』
2021年度「eえほん賞」受賞作品
2021年度のテーマは「水」。
応募総数は13作品、そのうち以下の5作品が入賞しました。
最優秀賞『あたしがないたら』作:あき
おかあさんから怒られるたびに、すぐに泣いてしまうあたし。
あたしが泣いたら一体どうなるのか、おかあさんは知らない…?!
手書き文字と爽やかな絵が空想膨らむ物語にマッチし、オチがついていて気持ち良い。のびしろとセンスを感じる作品。
優秀賞『きみのいばしょ』作:いぬい かるな
嫌われ者のカビくんはどこに行っても追い出されてしまい、いつも悲しそう…。
そんなカビくんは水くんと笑顔でいられる本当の居場所を見つけにいく。
水彩表現がカビというユニークなモチーフを引き立てる、物語の展開に引き込まれる魅力的な作品。
奨励賞『Weather Princess』作:ほそかわ えみ
空の上のお姫さまの感情が空の下の町の天気。
雨ばかり降らせて叱られるお姫さまは、次第に自分の感情を押さえつけるようになるが…..。
柔らかい絵のタッチによるキャラ、配色、構造、文字の配置、ほのぼの話の運び方などがまとまりがよく読みやすい作品。
佳作『ゆめの中の海水よく』作:しのはら ちなつ
ある日の夜、しょうたくんはぬいぐるみのかめきちに誘われ海の仲間達と遊ぶことに。
目が覚めて、夢の中でかめさん達とした約束を思い出したしょうたくんは….。
夢から現実へ、ひととき海中世界の旅に誘われる没入感と筆致の残る線画や優しい彩色が魅力的な作品。
佳作『がらがらぺ』作:おかだ かな
寒がりのダストンがりんちゃんの口の中に住み着いた!痛くてりんちゃんは大泣きしてしまう。
そんなりんちゃんはママから「がらがらぺ」を教わって….?
悪役のダストンが可愛らしく、見やすいイラスト、文字の大きさ、配置、絵柄、構図などセンスの光る作品。
2020年度「eえほん賞」受賞作品
2020年度のテーマは「SDGs」。
応募総数は17作品、そのうち以下の8作品が入賞しました。
最優秀賞 『あのよそうじ』 作:甲斐千尋
死後の世界は溢れるゴミで異臭が漂っていた。
閻魔大王は死者たちにあの世の掃除をお願いするが……。
あの世の環境汚染という時代を超える設定がユニークで、ノスタルジックな作風によってテンポよく物語が展開する作品。
優秀賞 『あくまちゃん』 作:たちばな
人間世界の学校に突如現れた悪魔のお姫様。
クラスの人気者になったあくまちゃんを気に入らないクラスメートがいて……。
色、光、人物表現、構図が目に心地よく、物語に引き込まれる構成・展開が秀逸な作品。
奨励賞 『ピピとビビ』 作:高橋美羽 前田朱里
王子様のピピとお姫様のビビはもうすぐ10歳の誕生日を迎えようとしていた。
お姫様になりたいピピと王子様になりたいビビは、誕生日の前日にある作戦を思いつく。
細部や夜景の表現、間や余白のとりかたが巧みで、色彩、構成、品のある美しい画風にグローバルな魅力を感じる作品。
佳作 『ひのこちゃんとこおりちゃん』 作:玉木麻裕
火を纏うひのこちゃんと氷を纏うこおりちゃんのジレンマ。
仲良しな2人はあらゆる方法で接触を試みる。
物語の展開に、コロナ禍でひとと触れ合えないという社会の問題と未来への希望を抱かせる作品。
佳作 『えー、やだ。』 作:おおば
「やだ」と否定ばかりするゆうやくん。
ついに友達に見捨てられたゆうやくんはある声に導かれ……。
唐突感のある展開ながら奇妙なユーモアがあり、何とも言えない表情の変化にどこか憎めないキャラが印象に残る作品。
佳作 『しょうくんの遠足』 作:鈴木響
しょうくんはピンク色が大好き。
遠足にピンク色のリュックを持っていくと、女の子の色と馬鹿にされ……。
クライマックスのシーンには驚きと開放感があり、チューリップの精「リプオ」がユーモラスに生き生きと描かれた作品。
佳作 『クマのレストラン』 作:堀田早姫
森の奥に佇むクマのレストラン。しかしお客さんはクマばかり。
他の動物たちにも来てほしいクマのレストラン改革が始まる。
明るく見やすく、優しくお洒落な絵柄で描かれたキャラクターの瞳と短い手がかわいらしい作品。
佳作 『ララの海』 作:もこ
砂浜に貝がらを探しに行った人魚のララ。
そこで出会ったリクは色々なプレゼントを持ってきてくれるが……。
キャラと構成、特に光のキラキラと配色にセンスがあり、美しい心の交感を軸にした物語によって主人公の人魚に感情移入できる作品。
2019年度「eえほん賞」受賞作品
2019年度のテーマは「ありがとう」。
応募総数は7作品、そのうち以下の3作品が入賞しました。
最優秀賞 『ガラクタロボット』 作:たちばな
ガラクタ山にひとりで暮らしているロボット。
ロボットは自分に欠けたナニカを探し始めるが……。
心を獲得していくロボットによって感謝を視覚化する試みが面白い作品。
優秀賞 『カモのおやこ』 作:富田咲良
お母さんカモに5匹の小ガモが産まれる。
うまくいかないことばかりで子育てに不安を覚えるお母さんカモだったが……。
母親の気持ちを代弁したハートフルストーリーと手描きの絵でテーマを体現し読者を温かい気持ちに誘う作品。
奨励賞 『おこられた』 作:あお
いつも怒られてばかりのぼく。
ついに怒られて嫌になったぼくの感情が爆発する。
確かな画力で臨場感のあるシーンづくりに成功しており、母への感謝という普遍的なテーマを痛みとともに描いた作品。
2018年度「eえほん賞」受賞作品
2018年度のテーマは「しぜん」。
応募総数は23作品、そのうち以下の5作品が入賞しました。
最優秀賞 『にじ』 作:岡田万優
虹の上を歩きたいりかちゃん。
動物たちに虹の上の歩き方を聞いてみるが……。
親しみやすい絵柄の水彩で描かれたキャラクターにユーモアがあり、驚きのラストが魅力的な作品。
優秀賞 『ひまわり』 作:わきこ
おばあちゃんが話す外の世界の話が大好きなもぐぞう。
もぐぞうはおばあちゃんにひまわりをプレゼントしようとするが、ひまわりを手に入れることはできるのか?
細部にも気を配りつつ、環境教育を子どもにも読みやすいように絵と物語に昇華した作品。
奨励賞 『わすれんぼうのおひめさま』 作:戸谷うらら
男の子が流れてきたケーキを食べようとすると、中からマリー姫が現れる。
しかし突然村に鬼が襲いかかってきて……。
昔話のコミカルなパロディながら、描きこまれた絵と色のセンスに魅力がある作品。
佳作 『ヤマアラシのかつやく』 作:あお
風邪をひいてしまったゾウの王様。
王様を温めるために動物たちが奮闘する。
デフォルメされたキャラクターと構図がユニークで細部までこだわって制作された作品。
佳作 『くものこうじょう』 作:山田麻友香
空の上にある雲を作る工場で、しっかり者のペコとのんびり屋さんのモグは仕事をしていた。
しかし仕事に飽きたペコとモグは雲で遊び始め……。
爽快感のある雲やキャラクターなど、綺麗な絵で子どもの夢を視覚化した作品。
2017年度「eえほん賞」受賞作品
2017年度のテーマは「遊びと絵本」。
応募総数は10作品、そのうち以下の3作品が入賞しました。
最優秀賞 『はるのきざし』 作:あお
一面に広がる銀世界の中、寒がりなウサギくんとカエルくんとサルくんはかまくらで暖をとっていた。
すると突然現れたカラスさんの家へ招かれて……。
寒さと暖かさのコントラストがよく、「春のきざし」という繊細なエンディングにむけて物語がよく練られた作品。
優秀賞 『ナカニちゃんのおよばれ』 作:よりと
ナカニちゃんの家に届いた一通の手紙。
ナカニちゃんは自分に繋がれた家を引きながら、手紙に書かれた「やまのうえ」を目指して出発する。
点描による不思議な生き物たちにオリジナリティがあり、ファンタジー世界の冒険が楽しい作品。
ナカニちゃんがLINEスタンプになりました!
奨励賞 『とっておきのパンケーキ』 作:わきこ
ホットケーキが大好きなくまさん。
ホットケーキを食べようとするくまさんのもとに次々と来客が現れて……。
利他的な行動について、シンプルな可愛らしいキャラクターによって分かりやすい話へと昇華された作品。
2016年度「eえほん賞」受賞作品
2016年度のテーマは「子どもの絵本」。
応募総数は13作品、そのうち以下の3作品が入賞しました。
最優秀賞 『ふしぎなねこ』 作:あきね
まわりと同じ色になってしまうふしぎなネコはいつもひとりぼっち。
しかし、あるくろいネコとの出会いをきっかけにふしぎなネコの運命は変化する。
丁寧にレイアウトされた構図と、シルエットで描かれたネコに映し出される色の変化が詩的で美しい作品。
優秀賞 『まど』 作:あけ
パパの作ったまどを手に入れて散歩に出かけるひろちゃん。
ひろちゃんがまどから見た世界とは?
窓のフレームを通してみるカラフルな世界と、現実のモノクロな世界の描き分けが面白い作品。
奨励賞 『ロボットとはかせ』 作:S
森の奥の研究所に住んでいた博士とロボット。
ある日ロボットは博士に留守番を頼まれ、博士が帰る時を待ち続けるが……。
63枚のイラストで描く長編絵本。
時をこえて動きつづけるロボットと、有限の命をもつ人間との交流が心温まる作品。
[執筆:たちばな 更新:大平・ぺな・小田]