かわこうせい (Cosei Kawa)
絵本イラストレーター
幼稚園:芋ハンコでほっそりしたカバを彫り、あたり一面に押しちらかしたことが、イラストレーターとしての原体験になった。
小学校:図工で、ジャックが豆の木に登っているシーンを描いたおりに、大好きな空をきれいな色で塗り重ねたところドブ色に染まり、みんなの前で先生に「何この色?なんで雨ドシャ降りなの?」といわれてひどく傷つく。二度と絵を描かないと誓う。
中学校:荒中(荒れ放題中学校)時代は、げっそり激やせで校内でも一二をあらそうガリガリの非力者だったが、うっかり不良の掃きだめ陸上部へ入ってしまう。部員はあだ名をつけ合う習慣があり、部長のアレキサンダー大王イカに「貧弱也(ひんじゃくなり)」と命名されかける。チビで手足ばかり大きく、夢と魔法のねずみと見まごう姿を晒していた。
高校:海をのぞむ、たいそうのどかな「のど高」に進学。潮風で脳をさびつかせ、体育のタコとりに熱中するも、獲物をぜんぶ持って帰る教師を心底呪い、こっそりウニをすする日々を送る。その際に、イカとタコの正面衝突を目撃し、「潮が引いたら波うち際をせめろ」という人生訓を得る。授業中に水平線を拝みながら「あの海の向こうには何があるのか」と思いをはせていたところ、骨盤がパリーンと7つに割れ、世界中に大陸となって広がっていく「骨盤プレートテクトニクス」を幻視する。
大学:キャンパスの「バカ山」で経済と哲学をかじりながら、芝生に座ってあくびをしたところ、口にカナブンが飛びこんできたため、のたうち回って吐き出したものの、虹色に輝くあまりの美しさに「これは記憶しておきたいエピソード」と、そのべっちょりしたカナブンを絵にしたことで、描く喜びに再び目覚める。
就職:お世話になっていた師匠が倒れたため見舞いにいったところ「就職するならデカいところにいけ…」と言い遺したことをうけ、起業をあきらめて就職。人生を変える契機は、ひょんなところに転がっていると悟る。師匠の病はカサカサの乾燥肌だったが、今は完治している模様。
会社員:外国に関わる仕事をしていたが、カナブンの啓示にあらがえず、絵の修練を積むべく辞職して渡英する。
絵本イラストレーター:英国で絵本イラストレーターとしての活動が軌道にのってきた頃、西洋禅の爽快感がくせになる。一方でどうしても寿司が食べたい!とフライ用のサーモンをさばいて食したところ、生臭くベチャベチャで飲み込めないほどまずかったため「道に落ちてるトコロテンみたいな味だよ」と捨てゼリフを残して緊急帰国。
絵の講師:外国ぐらしの反動から、和の粋をあつめた京都に流れ着き、うっかり居着いてしまう。絵本づくりのかたわらイラストを教えるようになるも、盆地のためフレッシュな魚介が入手しづらいことに気づき、静岡にある海辺の街へ移住し、絵本の研究と制作をつづける。
嗜好:パセリをこよなく愛する。小さい頃の好物は、かまぼこ。無脊椎動物では、ミゾレウミウシやコロラドハムシを好む。趣味はアリの観察と瞑想。好きな音楽は「きらきら星」。占い師に前世はシマウマだと告げられてからというもの、ボーダー柄を好んで着用する。
GOOB DESIGN賞:馬鹿げたデザインを誉めちぎる「GOOB DESIGN賞」創設を提唱している。暇とニキビをつぶしていたころ、ニキビ玉の飛び出した跡が、Gのかたちにクレーター化したのを見て、GOOB!(英語でニキビ、馬鹿げたこと)と叫び、この賞の創設を決意。コンセプトに反対者が絶えず、グッドデザイン賞に気兼ねしたデザイン関係者から嫌悪感をもって侮蔑されており、一向に実現する気配がない。そもそも受賞対象者が存在するのかどうかすら疑わしい。
【京都造形芸術大学でのインタビューをもとに再編集】